奈良県中部に位置する桜井市に鎮座する大神神社。日本最古の神社の一つとされ、元々地元の方からの尊崇が篤いところに、近年のパワースポットブームも相まってか、筆者が訪れた日も、たくさんの参拝者の方で賑わっていました。

大神神社には本殿がない？
大神神社は原始より信仰の対象であった円錐形の美しい山容を讃える三輪山を神体山として信仰しており、本殿はありません。

よって、江戸時代に徳川家綱により再建され現在では国の重要文化財にも指定されている拝殿より三輪山を拝む参拝の仕方が一般的となっています。

神体山・三輪山
大神神社の拝殿と三輪山との境界には、明神鳥居の両脇に小さな鳥居が組み込まれた不思議な形をした三ツ鳥居があります。全国でも数例しか存在しないこの三ツ鳥居も三輪山とともに神聖視されていて撮影などは禁止されています。

三輪山自体も江戸時代までは神官僧侶以外の入山を固く禁じてきた禁足地でしたが、現在では一般の参拝者の方でも入山可能です。

但し入山の際には許可が必要で、その他にも飲食や写真撮影の禁止、山中にて知り得た事をみだりに他人に話してはいけない、など厳しい規則があります。

三輪山とその周辺一帯が神奈備の地だった？

夫婦岩

大神神社に残る古い縁起書によると、三輪山頂上付近にある巨大磐座（奥津磐座）には御祭神である大物主大神が鎮座されているそうですが、三輪山中には他にも多数の磐座群が存在していて、4世紀頃の土器類も多数出土しているそうです。

大神神社境内にも二つの岩が寄り添っているように見えることから恋愛パワースポットとしてにわかに注目されている「夫婦岩」や、近くにある摂社にも多数磐座が存在していることから、三輪山、大神神社、さらにその周辺一帯が古代太陽信仰の祭祀場だったのではないかと考えられているようです。

大神神社の御祭神は蛇神？

巳の神杉

大神神社の至るところで卵やお酒がお供えしてあるの見て不思議に思われた方もおられたのではないでしょうか。

特に拝殿前にある巨大な大杉、「巳の神杉」と呼ばれている大杉の前には卵やお酒のお供え物が絶えません。これには御祭神である大物主大神が関係しています。

しるしの杉

『日本書紀』には大物主大神は蛇体であったと明記されており、大物主大神の化身である白蛇がこの「巳の神杉」に棲まわれていることから、蛇の好物である卵が供えられるようになったそうです。大神神社では蛇は神聖な生き物とされており、親しみを込めて「巳さん」と「さん」付けで呼ばれているとか。

衣掛杉

大物主大神は酒造りの神でもあり、三輪の枕詞が「うま酒」となるほどに美酒の産地だったといわれています。また酒屋の軒先に吊るされてある杉玉の起源も大神神社とされており、大物主大神の神威が杉の木に宿るとされていることからきているそうです。大神神社の拝殿にも立派な大杉玉が吊るされています。

おだまき杉

「巳の神杉」以外にも、根元だけではありますが三輪の地に大物主大神が最初に坐したといわれる「しるしの杉」、謡曲「三輪」でうたわれた「衣掛杉」、『古事記』にある有名な大物主大神と活玉依姫（いくたまよりひめ）とのラブロマンスで登場する「おだまき杉」など、由緒ある杉の木で彩られているようです。ちなみに大神神社の神社判も杉の木がモチーフとなっています。

多様性に富む日本屈指のパワースポット
記紀神話によると大国主神の魂である大物主大神が三輪山に鎮座し、第十代・崇神天皇の御代に災害や疫病が流行を鎮めるため、三輪山で祭祀が行われたのが始まりだとされる大神神社。

中世には奈良・興福寺の末寺で大神神社の神宮寺であった大御輪寺や平等寺が隆盛を誇るにつれ、十一面観世音や大黒天などとの神仏習合が進み、五穀豊穣・病気平癒・酒造りだけでなく商売繁盛、交通安全、縁結びまでありとあらゆるご利益に預かれる神道と仏教とが渾然一体と化した場に。

明治期の廃仏棄釈で仏教色は取り除かれたものの、現在でも境内で祝詞だけでなくお経を唱えている方もちらほら見受けるられるなど、今でも神道だけでなく、原始的な自然崇拝から神仏習合まで多様性に富む信仰を肌身で感じられるパワースポットだと感じられました。

そんな歴史や多様性のある信仰が集積したパワースポットですから、「三輪山に登拝中、滑落するも怪我もなく衣服がまったく汚れていなかった」「三輪山の頂上にある奥津磐座で龍柱が立つの目撃した」といった不思議な体験をなされた方もおられるようです。

実際に今回大神神社を参拝してみて、奈良県内だけでなく遠方からも多くの方々が何度も参拝なされるというのも納得がいくことだと筆者にも思われた次第です。

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  スピペディア編集部

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